正門前にずらりと車が並んでいるところなど珍しくも無いが、今日そのいつもの風景がいつもと違うのは、
いかにもな黒のベンツがその中に混じっていたからだ。
着崩した制服にくぁあ、と大きく欠伸をしてまだ短いドレッドをかき上げると、
16に届かないとは誰も信じないであろう黒豹のような体躯を伸ばし、少年は黒塗りのベンツを降りた。
名を、金剛阿含と言う。
彼のすぐ後から、対照的にきっちりとブレザーまで着込んだ双子の兄の雲水が同じく車を出た。
否、出ようとして、どん、と立ち止まったままの阿含の背中にぶつかった。
「おい、阿含…?」
「あ゛ー、雲子ちゃん?アレ何?」
アレ、と阿含が顎で指し示したのは、真っ白なフェラーリ。
幡を畳み開け放たれた車内からは、おおよそ朝の学校風景には似つかわしくない光景が広がっていた。
肩まで伸びた金髪の女子生徒を抱き寄せ、鬣のように立てられた、こちらは本物の金髪の男が、別れのキスと言うには濃厚な
接吻を与えていた。
「カスの分際で。」
「阿含、知らないのか?
妖はペンタグラム・コーポレーション社長、クリフォード・ルイス氏の奥さんじゃないか。
別に、別れ際に…その…口付けていたって…夫婦ならば…問題は無いんじゃないか?
入学式前に挙式を上げてしまったから、新婚旅行はゴールデンウィークだ、って話だったしな。」
「あ゛ー!!?」
「…なんだ、本当に知らなかったのか。」
悪くなる機嫌を隠しもしない弟に、「初恋なのか?」とは聞けず、ただ微笑む雲水だった。
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山も落ちも意味もなくて申し訳ないです。強いて言えばおにいちゃんが好きなんです雲水兄ちゃんを出したかったんです。
また例によって例のごとくゴンさんを苛めてしまいましたが、らんたは本当にゴンさん好きなんですよ?
でもね、ゴンさんには人生の辛苦を舐めてもっともっと人間としての深みを増してますます良い男になって欲しいんです。
逆に雲水兄ちゃんはもう苦い思いしなくていいと思う。もう充分だと思う。
あ、「いかにもな黒のベンツが並ぶのは珍しい」のは、黒のベンツは基本的に阿含用で、阿含が珍しく始業前に学校に来たから
珍しいのです。補足までに。
2010/4/30日記より。