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aventure
2010.6.2 uploaded
再会
 「ヨウイチ…!」
 シャワーを浴びてへたんと髪のおりたヒル魔を見て、クリフォードは絶句した。
 細身ながらもアメフト選手らしく鍛えあがった体、髪は金髪にしてツンツンに立て、耳には大ぶりなピアスが四つもぶら 下がっていた、日本チームの悪魔の司令塔。
 いつもチームの中心で作戦を組み立てていたその姿からは、クリフォードが高一の頃、ほんの一時期だけ同じクラスにいた 東洋系の黒髪の少年の面影は微塵も感じられなかった。ファーストネームは確かに同じだったが、名字が違っていたことと、 カジノで会ったときのヒル魔が全くそういう素振りを見せないことから、人違いなのだと思っていたのだ。
 唯一共通していた尖った耳も、自分の鼻が珍しくはあっても他にも似たような人間がいないではないのと同じで、たまたま 似たような形をしているだけだと思っていた。
 だが、そこに居心地悪そうに立っているのは、紛れもない、突然自分の前から姿を消し、以後どんなに探しても見つから なかった少年の成長した姿だった。
 二年前、ヒル魔は年も名前も国籍すらも偽ってノートルダム大附属に在籍していた時期があった。既に当時金髪だったのを 黒に戻し、ピアスも外して、逆立てていた髪は大人しくおろした姿で、Yoichi Gubosという名で。
 わざわざそんな面倒なことをしたのは、NFLを生で見るだけでなく、本場でアメフトをしている高校生のレベルというものを 知りたい、という理由からだった。
 クリフォードのクラスメイトになったのは偶然で、共に過ごした時期も二ヶ月に満たなかったが、ヒル魔への気持ちを自覚 したクリフォードから動いて、帰国前の二週間ほどは恋人として過ごしていたのだ。
 ヒル魔が何も告げず、全ての痕跡を消して帰国するまでは。
 「ファーストネームで呼ぶなんて、珍しいデスネ」
 呼ばれたヒル魔はといえば、既にばれていることを察しているのか、馬鹿にしたような笑みも、どこかぎこちない。
 「わかってんだろ。ここまできてしらばっくれんじゃねえ、サニー」
 ワールドカップの打ち上げから、決勝で戦った両チームの司令塔はそろって抜け出して、今は打ち上げ会場になっている ホテルのスイートにいる。
 「わかってっから、言わないでやったんじゃねえか。昔の火遊びの相手になんざ、会いたくねえだろ」
 目の前の男の目を見て逃げられないと悟った悪魔は、ソファに身を投げ出して答えた。
 「火遊び?」
 低く聞き返す声が獰猛さを隠し切れていない。
 「ま、でも昔遊んだ相手の方が誘いやすかったか?パーティの最初から、熱烈な視線をくれてたもんなあ」
 カジノで感じた違和感を確かめようと思っていたのもあるが、それ以上に、手持ちのカードを悪魔の頭脳を駆使して、 アメリカチームに匹敵する手札に変えた、その手腕に心から興味を惹かれた。
 ずっと探していた少年ではないかもしれない。
 それでも気にかけずにはいられない何かを、フィールド上のヒル魔に感じたから。
 一方ヒル魔は、ばれたのかと思って避けるのに必死だったのだが、自チームの仲間に不審がられるに至って、諦めてその腕に 捕まったのだ。
 「てめえは遊びのつもりだったのか?」
 「は、じゃなかったら何だったって言うんだよ。ちゅーがくせー相手に本気だったとでも?」
 「悪いか?」
 真っ向から聞き返されて、言葉に詰まる。
 「てめえが年下だってのは知らなかったがな、そんなことは問題じゃねえ。どうして、何も言わずに姿を消した?」
 「そんなこと、今聞いたってしょうがねえだろ」
 「答えろ」
 「いやだ、つったら」
 挑発的に笑った直後に伸びてくる腕に、殴られるか、と覚悟をしたが。
 「ばっ…てめえ下ろせ!何しやがる!」
 かなり無理やりな格好で肩に担ぎあげられ、ベッドルームへと連れていかれた。
 「これが最後の質問だ、サニー。どうして急に消えた?」
 声は爆発寸前の怒りに掠れていたが、乱暴にベッドに投げ捨てられたヒル魔もかなり頭に血が昇っており、引かずに再度、 答えることを拒否した。
 「そうか。言いたくなったら早めに教えろ。言葉が使えるうちにな」
 言われた意味を悟る前に、両腕が何かで拘束される。
 気がつけばバスローブの前が肌蹴られている。
 ふざけるな、と怒鳴りつけたかったが、二年ぶりに触れてくる体温を肌が覚えている驚きに何も言えないでいるうちに、 唇を塞がれてしまう。
 「んっ…む、んぐ…ぅ」
 飢えたように口腔内を余さず舐めまわされて、息苦しさに逃れようとするが、顎をがっちり押さえられているせいで、 ぴくりとも動けない。
 「、ゲホッケホッ…」
 喉の奥まで舌を突っ込まれて、あまりの苦しさにヒル魔の舌が痙攣しかかったところで、やっと解放された。
 咳きこんで涙が滲んでも、拘束されていては拭うことができず、視界はなかなかクリアにならない。
 覚えているよりも乱暴な口づけに、二年前にはあった、すかさず涙を掬い取る優しい指や柔らかな舌先の感触がないことに、 そっとヒル魔は覚悟を決める。
 「サニー、何か言うことは?」
 「っ、ねえよ」
 「そうか」
 見下ろすクリフォードの瞳が、熱を帯びてぎらつく。
 「さっきも言ったが。俺は本気だ。そのつもりで抱くから覚悟しておけ」


 もっと手酷く抱かれると、否、犯されると、思ったのに。

 両腕の自由を奪った後、クリフォードが乱暴を働くようなことは一切なかった。
 だが、いっそ無理矢理突っ込まれでもしたほうがよかったと思うぐらい、二年前を思い出させるような優しい愛撫に、 ともすれば封印していた名前を呼びそうになる。
 それなのに、二年前のようには相手に縋れない腕が軋む度に、もうあの頃とは違うのだと思い知らされて、胸が痛んだ。
 黙って帰国したあの日に、もう愛されることはないだろうと、覚悟していたはずなのに。
 「…っ!……ぅ、…!」
 優しく残酷な指が、この二年間でずいぶん変わった体を辿る。
 身長も伸びたし、体重もあの頃に比べれば増えた。
 まだ割れかかっていただけの腹筋は綺麗に割れて、腕も脚も子供らしい柔らかさはすっかり消え、無駄な肉が一切無いせいで、 ゴツゴツした骨っぽさが目立つ。
 何より、最初の一年はまともなラインが栗田しかいなかった泥門デビルバッツで、ヒル魔が負った傷は多い。クリフォードが 知らない傷跡が、その細い体のあちこちに刻まれていて、この二年間のヒル魔の激闘を物語っていた。
 「ずいぶん粘るな」
 傷を見つける度にひどく優しく口づけるくせに、同じ唇から紡がれるのは、睦言ではなく、挑発。
 せめて声だけは漏らすまいとするヒル魔を見つめる瞳からは、本心が読めない。
 「…ハ、そっちこそ、ちんたら撫で回してねえで、とっととヤッたらどうだよ」
 「物覚えの悪い生徒だな。俺は、遊びで済ますつもりはないと言ったはずだ」
 クリフォードの台詞に上手い返事も思いつかず、顔を背けていると、唇が脚をゆっくりと下りていくのを感じる。
 膝にキスをされて、まさか、と視線を戻した先には。
 さらに下へと唇を滑らせる、クリフォードの姿。
 あの頃より更にガタイも風格も王者然とした男が、初めてのときのように、ヒル魔の足の甲に口づけて、笑った。
 「…ぁ」
 それは、決して意地の悪いものではなく。
 「意地っ張りだな、サニー」
 苦笑に近い笑みは、何もかもを見抜いているようで、ヒル魔を動揺させる。
 「なに、が」
 本心を隠すのは慣れているはずなのに、ミスリードは得意なのに、どういう意味だ、と聞く声が、自分でもわかるほど 震えていた。
 「俺と互角に戦えるぐらい、強くなってんじゃねえか」
 ヒル魔の体の傷を見て、その傷に優しく口づけるたびに切なく震える瞳を見て、クリフォードは悟ったのだ。
 二年前、ヒル魔が自分から去った意味を。そして、自分との関係を、決して火遊びだなどと思っていなかったことも。
 選手として恵まれた体ではなく、環境でもない彼が、それでも強くなるために、この二年間、アメフト以外の全てを捨てて、 戦ってきたということ。
 再会してからも何も言ってこなかったのは、何もかもを切り捨てて前へ進んできた彼の、愛されることへの自信の無さが 原因だろうということも。
 強くなるために全てを捨てたのならば、力をつけた今、捨てたものをもう一度、拾ったっていいだろうに。
 もう取り戻せないものもあるだろう。
 けれど、少なくとも自分は、もう一度ヒル魔を見て、もう一度惹かれたのだ。
 再び差し出した手を振り払う必要なんて、どこにもない。
 「仕方ねえな、年下のサニーに手本を見せてやるよ」
 泣きそうな目をしているくせに、火遊びで済ませよう、クリフォードにとって自分は遊びだったのだ、と思いこもうとする なんて、どれだけ愛情に不慣れなのか。
 いまだ、ろくに返事もできない相手の腕の拘束を外して、改めて愛しい名前を呼ぶ。
 「ヨウイチ」
 囁いて優しく口づければ、やっと覚悟を決めたのか、解放された腕が、おずおずとクリフォードの背に回った。
 それでもなお、その腕に力がこもることはない。本当にここにいていいのかと戸惑うように添えられたままで。
 相変わらず、こういう方面には普段の悪魔的な頭脳も大胆さも発揮されないらしい。
 「安心しろ。黙っていなくなった仕置きは後できっちりしてやる。二度とそんな真似、する気がおきねえようにな。もう、 一生逃がしてやらねえよ」
 覚悟しておけ、と脅すように愛の言葉を告げれば、ようやく背中に回った腕に力が入る。
 アメフトのボールだけを掴んでいたその両手は、気持を伝えるように、クリフォードの背にぎゅっと抱きついてきた。


 「よく考えれば、Gubosとは、バカにした名前だったな。bogusのアナグラムじゃねえか」
 bogus,偽の、という意味の言葉をファミリーネームで名乗っていたことには、ヒル魔を探し回っていたときに気づいた。
 気づいて、探すのをやめたのだ。
 自分が愛した人間は、存在しないのだと悟って。
 それでも、アメフトを続けていれば、プロになれば必ず、アメフトが大好きだった彼の目に留まるだろうと考えていた。
 まさか、フィールドで再会することになるとは思いもしなかったのだが。
 「ああ、適当な名前にしてもよかったんだけどな。アメフトやってねえ俺は、偽物だろ?」
 ぐったりとシーツに伏せたままでも、強気に牙を見せて笑う悪魔の姿は健在だ。
 これが天使に見えるなんて、恋は盲目どころの話じゃねえな、と内心で思いながらも、クリフォードの体は、二年前の習慣に 従って動く。
 「もう黙って消えるなよ。二度目はあの程度の仕置きじゃ済まねえぞ」
 全身、どこにも力が入らないのだろう、完全に無抵抗になった相手を腕の中へ引き寄せて、唇には触れるだけのキスを。
 「good night.」
 「明後日には帰国するけど、もう逃げねえよ。体ももたねえし」
 行方を眩ますようなことはしない、と誓う。アメリカと日本に離れていても、居場所さえわかっていれば、会いに来れるし、 会いに行ける。離れることと逃げることは違うから。
 「good night,…Cliff」
 相変わらず、少しの躊躇いと、隠しきれない愛しさをこめた柔らかい声が、習慣の再開を嬉しげに受け止めた。










あなたの人形中条遼さまが、JK(JOSHI KOSEI)祭りにお寄せくださいましたクリフォヒルです!
涙…!滝涙…!こ、こんな素晴らしい作品をいただいてもよろしいのでしょうか…?!
も、萌えます…!萌えすぎます…!もう全てがツボです…!
らんたはもう萌えツボを打ち抜かれまくって死にそうです。でも本望です。(←キモい)
もうこのラブとエロ!そしてヒル魔さんの美しさ!
本当にクリフォードは宇宙一の幸せ者だと思います。
そしてらんたも先生と並ぶほどの幸せ者です!
中条さま、本当に本当に、どうもありがとうございます!
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