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aventure
2010.6.2 uploaded
 グラウンドの方からかすかにざわめきが聞こえる。バックヤードに人気はなく、ほんの数十分前の熾烈な試合が 嘘のようだ。
 だがそこには、選手たちの熱い体温が残っているのか、試合の熱気が冷めやらぬ、籠ったような奇妙な暑さがあった。 季節はまだ、やっと春を迎える準備を始めたばかりだというのに。
 その、普段ならもう誰一人いないはずのロッカールームで、密やかな声が攻防を繰り広げていた。
 「いや、いや、だ。はなせよっ…やぁっ!」
 「往生際が悪いな。俺は約束を守った。今度はてめえの番だろう」
 壁際に追い詰められて、細い身を捩って抵抗しているのは、アメリカで見るには珍しいセーラー服を着た東洋人らしい 黒髪の少女。その細い肩を容赦なく押さえつけているのは、獅子の鬣を彷彿とさせるブロンドヘアの男だった。男の方は、 ユニフォームを着替えてはいるが、間違いなく今日の花形、勝利したチームのQBだ。
 「ちがっ…ここは、いやだって言ってっひぁ!」
 抵抗する少女の声が悲鳴に掠れる。
 短めのプリーツスカートの裾へと差し込まれた男の手が、不穏に蠢いていた。
 「大声出すと、外に聞こえるぜ?」
 低く笑う男の言う通り、試合後のロッカールームには、警備員か清掃の者か、はたまた忘れ物を取りにきた選手か、 誰が来てもおかしくはない。
 「困るのはそっちだろっ」
 大声を出させるような真似をするな、と睨みあげたところで、涙目ではさして威力はない。
 「俺を誰だと思ってる?この国でアメフトのエースQBがロッカールームに女連れ込んだぐらいで、咎められると思うか?」
 「おれ、は、女じゃねえ、よ!」
 「この状況で、誰がそう思う?何のために、こんな格好させたと思ってんだ」
 「てめっ、最初からそのつもりかよ…!」
 少女に見えたのは、男だった。
 だがそれにしても、まだ少年、と言った方がいいような、発育途中らしいどこか関節に丸さが残る手足に、完全に声変わり が終わっていないのだろう、不安定に高く低く響く声は、男らしい厚みのある体をしている目の前の相手に覆いかぶさられて 顔が見えない上、スカートを穿いているせいで、傍目には少女にしか思えない。
 「気付かなかったてめえのミスだ」
 「け、けどっ」
 「なんだ」
 「いくらてめえでも、レイプはまずいんじゃ、ねえの?」
 「だから、この状況で誰がそう思うんだ?俺に抱かれるのを本気で嫌がる女がいるとでも?」
 傲慢極まりない台詞だが、事実でもあった。
 彼は、まだ1年にも関わらずハイスクールのアメフトチームでエースQBの地位を得た、典型的なジョックである。
 どこの学校にもジョックは数人いるが、その中でもアメフトのQBというポジションは花形中の花形で、加えて容姿の派手 さ、群を抜いた頭の良さなどから、キング・オブ・ジョックス、学校の頂点に君臨していると言っても過言ではない。
 クリフォード・D・ルイス。
 このころから既に、王族だなどという噂が身辺を取り巻いていた。
 最初は本人が言いだしたのではなく、背景が見えない、親の仕事が全く掴めない、けれども明らかに金持ちである、という 彼のことを、まずはミーハーな少女たちが、次いで取り巻きたちがそんな風に言い始めたのだ。
 否定も肯定もせずにいたら、いつの間にか事実のようになっていた。
 それを利用するようになるのは、まだ少し先のことだが。
 「諦めろ。約束は約束だ。それとも、殴られて縛られて犯されるのが好みか?」
 酷い言葉にびくっと竦んだ少年は、何度も逡巡を繰り返し、冷たい碧眼に見下ろされる前で少しずつ体から力を抜いた。
 クリフォードの言う通り、これが取引だというのはわかっている。
 確かに相手は先に約束を守った。
 データを取られるとわかっていて、一番近くで最高のプレーを見せてくれた。
 考えてみれば、彼から奪える最高の物を奪ったと言ってもいい。まあ、クリフォードはまさか目の前の華奢な体躯の少年が 、アメフトプレイヤーだとは夢にも思っていないだろうが。
 それに、セックス自体にイエスと答えたのは自分自身だ。
 ただ、場所が場所だったし、試合後すぐにこんなことになるとは思わず、試合の余韻を残した相手の獰猛な雰囲気に、咄嗟 に抵抗してしまったのだ。
 「好きに、しろよ」
 「いい覚悟だな、ヨウイチ」





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