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20012.5.24-12.31 web clap
Heaven Is A Place On Earth. V
 吊るされた大きなリースをぼうっと眺めていた少年は、インターフォン越しに誰何されることもなく開いた扉にたじろいだ。慌てて意識を目の前に戻すと、そこに(少年にとっては)見慣れたNFLトップスター二人を見つけ、何百回と脳内でシミュレーションした通りに、明朗に言葉を紡いだ。

「僕はアキラといいます!フィラデルフィアのルクス・マーテューティーナ教会孤児院から来ました。誕生日は分かりませんが、多分五歳です。痩せっぽちですが、病気はありません。精神の異常も多分ありません。どうか……どうか僕を、お二人の、クリフォード・D・ルイスさんとヨーイチ・ヒルマ・ルイスさんの、養子にして頂けませんか?」

 アキラ、と名乗った少年は言い終えると、深く首を下げ、そして何故か、両腕に抱えていた些か巨大過ぎるテディベアを三人に向かって差し出した。クリフォードの腕の中のディヴィッドが、堪え切れず破顔し、もしかしてダディーとマム(そう呼ぶと容赦なくマシンガンをぶっ放されるので、本人の前ではヨーイチと呼んでいるが)の仕込みか?にしては二人とも驚きすぎじゃないか?と湧き上がる様々な思いに百面相しながら、クリフォードとヒルマを見つめる。

「テメー、どうやってここが分かった?」

 試すようなヒルマの質問に、ディヴィッドの方が不安になるが、当のアキラは背筋をピンと伸ばし、はきはきと答えた。

「ここの住所は、インターネットで調べました。防御壁外すのにちょっと時間がかかったけど…。ちょうど、クリスマスに合わせて、ブラウンズビルのご夫婦に引き取られる子が居たから、そこの車のトランクに忍び込みました。それで、近くまで来てからは、『叔父さんを訪ねてきた』って言って、近所の人に聞いたんです。」

 なるほど、確かにアキラの容姿ならば、道を尋ねられたご近所さんが『叔父さん=ヒル魔』だと思い込んでも不思議はない。だが、それよりも、『外すのに時間が掛かった』レベルのセキュリティではなかったはずだ。クリフォードやヒル魔だけでなく、レオナルドというセレブの実家でもあるし、なによりウィザード級のハッカーであるロバートが皆の個人情報を厳重に管理しているはずだ。それなのに。

「ケーケケケケ!聞いたかセンセー、『インターネットで調べました』、『外すのにちょっと時間が掛かった』だとよ!糞五歳児が!ケケケ!!」
「サニー、笑いすぎだ。」
「トランクに忍び込んだ、って…自分から、一人で施設を抜け出したのか?」

 ヒル魔の高笑いを遮るように問うたのはディヴィッドで、自らの境遇と照らしているのだろう、信じられない、といった表情でアキラを見た。

「うん。僕、生まれてすぐに捨てられて、ずっと教会で育って…小さい頃は、それが当たり前だと思ってました。みんな優しかったけど、段々、あそこは僕の家じゃないんだと知って、悲しくなって…でも、僕、全然知らない人に、今日からうちの子になってくれ、って言われても、それが牧師先生達の言う『すごくいい人』だとしても、納得いかなかった。だって、生まれたときから親が居ないんだから、僕が自分で自分の親を選んで良いんだ、って……そう思って……。」

 ヒル魔に良く似た幼子の告白に、ディヴィッドとクリフォードは肩を竦め、顔を見合わせ噴出した。笑い合ったままヒル魔の方を向けば、そこには勝利を確信したときに見せる、悪魔の美しい微笑があった。
 アキラはまた頭を深く下げ、テディベアを差し出していた。精一杯の誠心誠意を伝えるかのように。

「アキラ、っつったな。テメェに裏がないかどうか、それはこれから調べさせる。だから……んなトコにボケッと突っ立ってねぇで、さっさと上がって糞シリアルでも食え。」

 アキラがガバッと顔を上げると、言い捨てたヒル魔は既に背を向けていた。代わりに、クリフォードの腕から降りて駆け寄ってきたディヴィッドに、アキラは瞳を潤ませる。 「ありがとう!ありがとうございます!…君はディヴィッドだよね?僕のお兄さんだ……よかった、よかった…僕、一応保険もかけて、サンタさんにもお願いしておいたんだ。『家族が欲しい』って。」
「…奇遇だな。オレもサンタのジジイに『弟』を頼んであったんだ。」
「ほ、本当?!」
 玄関先で抱き合って飛び跳ねそうな勢いの二人に、「オイ糞ガキ共、早くしやがれ!」という悪魔の怒号と、待ちきれないとばかりに二人同時に抱え上げる力強い腕が伸びた。



 数分後、「『親を選んでいいと思った』だって?!その発想が既に最上級のハッカーだよ!」とロバートが大興奮したのも、無理からぬ話だ。










これで一応PDAシリーズの子供達は揃った感じです。あ、娘も居たほうが良いですかね?
最後はテンポよく行こうとして力尽きました。
こんな感じで次世代はディヴィッド(内気な天才・ヘタレ)×アキラ(強気な天才・誘い受け)です。
ちなみに関係ないですがRomanticシリーズではクロト(オレ様な天才)→ヒル魔(母)です。(笑)

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