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2010.2.2 uploaded
夜檻
 脱衣所の引き戸を開けると、他の者は皆上がった後なのだろう、一人残った白い身体が黒いTシャツをくぐる所だった。 生乾きの金髪からは時たま水滴が滴り、滲む汗と共にTシャツに染みを作っていた。熱気と湿った匂い。恐らくヒル魔も阿 含が入ってきたことには気付いているであろうに、互いに言葉は発しなかった。今までも、そうだった。


 女は、甘ったるく甲高い声で散々鳴いた後、鏡台の前に座り髪を整えていた。まったく突然呼び出したりして、あごんは ホント甘えん坊なんだから、と文句を垂れる割には嬉しそうな口振りで、ストレートに近いブラウンのロングヘアーをブラ シで梳かしていた。柔らかな肩、柔らかな腰、小さな身体。その後姿を、阿含はベッドの上で眺めていた。そして唐突に、 違う、という痛哭にも近い叫びが頭に響いた。
 テメーは救えねえ甘ったれだな、糞ドレッド。事後の甘さを含んだ、声変わりを終えたばかりの掠れた声はそう言った。 未だ怠いのだろう、億劫そうに長い足を引き摺りながら、鏡の前で濡れた金髪を乾かしていた。尖った肩、骨ばった腰、薄い 身体。あの頃は肉どころか筋肉も碌についていなかった。目線も阿含のそれより僅かに低かった。
 帰る、唐突に阿含は言い捨て、ちょっとどうしたの、待ってあごん、甘い声で慌てる女に車を出させた。
 ペンションのロビーには、既に湯から上がったらしき数人がうろうろしていた。あ、阿含さん、あと十分で食事っすよ、 と一休が声をかけてくる。それに何も返さず脇を過ぎ、誰に訊いたわけでもないが確証をもって、阿含は男湯の脱衣所へと続 く引き戸を開けた。


 「髪拭かねーとまた風邪ひくぞ、カス。」
 「…お早いお帰りで。」
 ヒル魔はこちらを振り返ることなく、フェイスタオルを肩に掛けながらそう言った。すらりとした印象は今も変わらないが 、細く折れそうですらあった首や肩、腕や背にはしなやかな筋肉がついている。今では目線すら並んだ。阿含は苛立ちを隠さ ずに、弾力のついた細腰を左手に抱いた。火照り艶めいた首筋に顔を埋めれば、ヒル魔は身体を捻りようやく阿含へと向いた。
 「…やり足りねーなら他を当たれ。」
 阿含の身体から女の香水の匂いでも立ったのだろう、振り返ったヒル魔の表情が僅かに傷ついた風で、阿含は甚く満足した 。クッ、と笑う阿含にヒル魔は顔を顰めて、阿含の身体を押し返した。
 「食事の後は会議室でミーティングだ。テメーも来い。」
 吐き出される言葉が何であろうが、触れる理由が拒絶であろうが構わないのだ。それがヒル魔から阿含だけに向けて発せ られるものならば。触れた端から、否離れていようとも、互いの存在を認識した瞬間、境界が分からなくなる。纏う空気から 、触れた指先から一つの存在へと溶け交わっていく。それは恐らく、ヒル魔も感じている感触。けれどどう感じようが現実に は二人の人間が溶け合うことなど出来よう筈もなく、阿含はいつも世界そのものを壊してしまいたい衝動に駆られる。


******************************


 ミーティングの後、何を言わずともヒル魔は阿含について来た。和室が殆どのこの小さいペンションで、阿含にあてがわれ た部屋は和洋室。他の者が三人一部屋という部屋割りの中、阿含は一人部屋。更にバストイレつき。優遇だ、贔屓だ、と部外 者が聞けば思うのだろうが、内部の人間からしてみれば、厄介払いされただけだと分かるだろう。どうせ夜は女の部屋で過ご すのだろうし、部屋などあってもなくても変わらないだろう、と。確かにそれは正しい解釈ではある。が、今日この時は違っ た。阿含はヒル魔を先に部屋に入れ後ろ手に鍵を閉めると、アメフト選手にしては細い身体を易々と抱え上げ、ダブルベッド に放り投げた。ヒル魔は受身の態勢をとりつつも大人しく投げられていた。抵抗や逃げる素振りも見せない。
 「他当たれっつってなかったか?」
 「あんだけ食事中もミーティング中もガンつけられりゃあ嫌でも気付く。無理矢理ヤられんのは趣味じゃねぇ。」
 「ククク、せいぜい可愛がってやんよ。」


 碌に慣らしもせず突き入れたそこはそれでも阿含を熱く柔らかく迎え入れた。決して厚くはない壁から、隣の部屋や廊下の 喧騒が漏れ聞こえる。声など我慢できた試しがないヒル魔は、自らフェイスタオルを口に押し込んで嬌声やら悲鳴やらを呑み 込んでいた。膝裏に手を差し込み、膝が顔につくほど折り曲げて上から叩きつけるように突き入れる。ヒル魔は投げ出した手 でベッドシーツを掴み、視線を遠くへ遣っていた。阿含本位のその行為で、しかしヒル魔は屹立した性器から透明な液を止め 処なく溢している。
 阿含の知らない二年間、何処の誰と何回の性交渉を持ったのかは分からない。それでも阿含を包むヒル魔のそこは初めての 時のようにきつく頑なで、最後の時のように熱く柔らかい。僅かに漏れるヒル魔の呻き声や、阿含が動く度に潤む切れ長の瞳 にひどく高揚した。声を我慢すればバレないとでも思っているのだろうか。こんなにもギシギシと軋むベッドの音。一度でも そのような経験のある者ならばすぐに気付くだろう。一晩中ヒル魔が自室に戻らないというだけで栗田などは騒ぎ立てるだろ うし、朝阿含の部屋から出るヒル魔を誰かが見たら、どのように思うだろう。それら全て、考えるほどに気分が良い。
 穿つ腰の動きを速める。既にヒル魔は一度、触りもしない性器から精液を迸らせ自身の白い腹や胸に白濁の染みを作ってい た。こんなダッチワイフのような乱暴な扱いを受けていて、だ。速く深いストロークに更に感じたのか、ヒル魔はビクビクと 震え、押さえられたままの足をジタバタと動かした。阿含は一度膝の裏から手を離しヒル魔の両足を肩に担いだ。手を離した 場所にはくっきりと赤い痣が出来ていた。上体を倒し、ヒル魔の鎖骨に噛み付いた。再びビクッと震える身体を押さえ付け、 動きを再開した。抜けそうなほど引いてから、最奥まで一気に。そしてそのまま捏ねるように。深く、速く。ヒル魔の屹立は 阿含の腹に擦れ、ドロドロに濡れている。あ゛ー、クソ、イく。阿含は自身の絶頂が近いことを感じ、ヒル魔の口からタオル を無理矢理引き抜いた。苦情を発しようとした口から漏れる悲鳴。高くはない、掠れた、心地良いヒル魔の嬌声。しかし次の 瞬間にはヒル魔は自らの唇を噛むことで声を堪えていた。面白くねえ。
 阿含は苦しげなヒル魔の首筋に左手を伸ばした。指を開き、頚動脈を押さえるように顎の下を締め上げた。か、はっ。ヒル 魔が息苦しさに口を開く。覗く真っ赤な舌に誘われるまま、口づけた。舌を差し入れ、絡め取り、吸い上げ歯を立てる。同時 に後孔もぎゅうぎゅうと締まり、阿含は堪えずヒル魔の中にぶち撒けた。口唇を解放する。ヒル魔は大きく咳き込み、涙で歪 んだ顔のまま阿含を見つめた。このまま左手に力を入れ続けたら、一つになれるのだろうか。口角を上げる阿含に、ヒル魔は 微笑み力なく阿含の首に両手を回した。


 がは、ゲホッ、ゴホ――。
 何故、ヒル魔は抵抗しなかった。何故、この手を除けようとしなかった。離した首筋にはやはり手の形の痣が残っていた。 覗き込む阿含の長いドレッドが下に垂れ、ヒル魔を閉じ込める檻のようだ。呼吸が落ち着くと、ヒル魔は阿含を見たまま大き く数度瞬きをし、そのまま眠ってしまった。ゆっくりと腰を抜くと、擦られ過ぎて赤くなった孔からとろりと阿含の精液が溢 れてきた。
 「…一回で足りるわけねーだろ、このカス。」
 けれど眠ったままのヒル魔を犯す気にはなれず、阿含は乱暴にヒル魔の後孔から自らのものを掻き出した。汚れたシーツを 取り去って、ヒル魔の身体についた精液も自分の性器もそれで拭う。それを終えると、阿含はベッドの端に佇み、眠るヒル魔を 見下ろした。腿と首に手形の痣、鎖骨に噛み痕、緩く開いたままの足からは赤く蕩けた後孔が覗いている。練習で疲れていた のは分かるが、阿含を放って気持ち良さそうに寝息を立てて。
 阿含は別に怒りもないのに形だけ舌打ちをし、ベッドに横になった。ヒル魔にも掛かるように布団を引き上げる。そして、 暫し迷い、隣の白い身体を腕の中に閉じ込めた。










捏造WC合宿設定で暗甘を目指しました…が派手に玉砕しました。
1000番ゲッター夏秋さまに(押し付けがましく)捧げさせていただきます。
本当はアヒルデーに差し上げたかったのですが、遅刻してしまいました。
つまらないものですが、キリ番&お見舞いの品として、どうぞもらってやってください。
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