机に伏せた両腕から寝顔が覗いている。
肩まで伸びた長めの髪は上半分を緩くゴムで纏められ、零れた幾束かの髪が精悍な横顔に影を落とす。
黙ってりゃーそれなりなんだけどな。
ヒル魔はもう温くなったコーヒーを、音を立てないように啜った。
なんだってもう引退した身分である自分が、試験直前に後輩の自宅まで赴いて面倒を見なければならないのか。
まもりはセナとモン太を、雪光は黒木と戸叶を、武蔵は栗田を、そして自分はこの男を。
適材適所とはいえ、家族が皆寝静まった今、気持ち良さそうに寝息を立てるこの男との距離をヒル魔は持て余していた。
男がもぐもぐと寝言を呟き、口の端からだらしなく涎を垂らした。
下に敷かれたた、60点の数学の小テストに小さくしみができる。この男にしたら、奇跡と言っていいほどの点数だ。
やると決めたら、出来るかどうかなど二の次でただ頂だけを見て登る。
そういう無謀さを、とても大切にしたいと思う。
バカな子ほどカワイイ、って奴か。
ヒル魔は苦笑して、音を立てぬようにカップをテーブルに戻した。
整えられた顎鬚に手を伸ばし、閉じられた目蓋に小さく唇を落とした。
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タイトル「桃色個人授業」、サブタイ「鈴音は見た!」(笑)
「マイナーヒル受けでどこまで萌えられるか」シリーズ第三弾。
拍手コメントでnさまが、瀧ヒルは見た事が無い、と仰っていたので挑戦。nさまに捧げます。
瀧ヒルというか瀧←ヒルになっちまいました。予想外に萌えてしまって困った件。2010/1/23日記より。