今度はNFLで会おうと固く交わした握手を解いて、既に背中を向けていたヒル魔に駆け寄った。
「待って、ヒル魔!」
振り向いたヒル魔は、爪の先まで整った細い指でヘルメットを肩に掛け、ガムを丸く膨らませながら、「何か用か」と気
のない返事を返す。
「えっと、その…『ありがとう』。」
サンキュー、ではなく、ありがとう、と。
「ケーケケ、脳味噌ん中蛆虫でも湧いたか?テメーに礼を言われる筋合いはねーな。」
「いや、だって、俺……あの時泥門と戦わなかったら、俺、きっと今ここに居なかった。」
汗で僅かに額に貼りついた金髪がキラキラと光る。
「もしあの時、戦った相手が泥門じゃなかったら。もしセナと戦っていなかったら。もし泥門のQBがヒル魔じゃなかったら、
ウチが余裕で勝ってただろうし、アポロさんも俺を使わなかったと思う。だから」
ヒル魔の目の前に、右手を差し出した。もう一度、ありがとう、と告げる前に、ヒル魔はパシンと、差し出された右手を叩
いた。
「俺は好きなようにやっただけだ。テメーがMVPを獲ったのは、テメーが世界一のRBだからだ。」
笑う口元は牙のような犬歯を覗かせているのに、その表情はひどく綺麗で。
最高の殺し文句だ、と思った。
「礼なんざ要らねぇから早くスーパーボウルでMVP獲りやがれ。…まぁ、その前にセナがテメーをぶっ殺すけどな。ケケケ。」
そこまで信頼されているセナを、とても羨ましいと思った。
…そんなパンサーを、クリフォードは殺してやろうと思った。
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2010/1/20日記の、「マイナーヒル受けでどこまで萌えられるか」シリーズ第一弾でした。
前代未聞のパンサー×ヒル魔に挑戦。敢え無く玉砕。最後の一行でギャグになってしまった件。