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黒い赤
2010.2.11 uploaded
球根
 部室にはただ二人、WAIOを弄るヒル魔と、一人最後までトレーニングを続けていた大和だけが残っていた。茹だるとはまさ にこのことで、練習後の疲れた身体は少しでも多くの酸素を取り込もうと呼吸数を上げるが、吸気には多分に水気が含まれて おり、息をする度に微温湯に溺れるようだ。最京大アメリカンフットボール部部室には勿論エアコンも完備されているが、寒 がりなこの二年生QBのことだ、暫く前に冷房も切ってしまったのだろう。大和には少し苦しい。先程まで真っ赤に染まってい た曇りガラスの向こうは、今はもう黒に包まれていた。
 カタカタとヒル魔が奏でるテンポの速いキーボードの音と、ちょうどその背中合わせの位置で、大和が汗で張り付いたTシャ ツを脱ぐ衣擦れの音が、混ざり合っていた。大和の癖毛は額に張り付き、上気した肌は精悍さを一層際立たせていた。
 「…ねぇ、ヒル魔氏?」
 ヒル魔は答えないが、静まり返ったこの部屋で二人きり、聞こえていないわけはない。大和は構わず続ける。
 「間違っていたらすまない、だが…」
 「……んだよ。」
 間をおいて返された声には彼らしからぬ緊張が含まれていて、そんなにも小さなことを感じ取れる自分自身が可笑しくクス リと音なく自嘲した。
 「ヒル魔氏は、ゲイだよね?」
 キーボードを叩く淀みない音が、乱れる。その僅かな空白に、大和は身体の底から興奮が駆け上がるのを感じた。
 「……………だったらどーした?」
 大和は、今が夏で良かったと思った。こうしてTシャツを脱いだままでいても身体は苦痛を訴えないし、ヒル魔が肩を露出さ せていることも珍しい。何もかもお誂え向きで、大和は一転、爽やかに笑った。
 「…おい、糞癖毛、俺が糞ホモだったらなんだっつー」
 「知っているだろう?」
 卑怯なのだろうか。
 ヒル魔には想い人がいて、けれどその人物は決してヒル魔の方を向くことはない。大和の思いはひたすらヒル魔に向かって いて、ヒル魔はそのことに気づかないようにしている。
 卑怯、なのだろうか。
 これから二人の間に起こる全てを、夏の暑さのせいにするのは。
 大和は、WAIOに向かうヒル魔を後ろから掻き抱き、その首筋に顔を寄せた。
 「…ヒル魔氏、好きだよ。」

 抱き締めた身体が震えるのが分かる。揺れているのだ、ヒル魔の心が。美しく気高く強かなヒル魔の心が、脆く儚く、 悲鳴を上げているのだ。どんな思いで見ていたのだろう、毎日飽きもせず別の女性をトレーニングルームに連れ込み、部活 が終わると連れ帰る男を。心の底から部活を楽しんでいるヒル魔が、それを目にした瞬間表情を失うのを、男は知らない。い つもは凛と美しいヒル魔が深く傷つくのを見て、鳩尾が締め付けられるようになる大和の事を、ヒル魔は見ないようにしてき た。そのヒル魔が今、深く真っ直ぐな瞳を揺らして、大和を見つめようとしている。
 「いいんだ、分かってる。ヒル魔氏が阿含氏を好きなことぐらい、分かってる。」
 「…大和…。」
 糞癖毛、ではなく、大和。それだけで、大和の全身を稲妻が走る。
 大和は、揺れるヒル魔の心に真っ直ぐ届くよう、優しく耳元で囁いた。
 「思い切れないのなら、無理しなくて良いさ。寂しくなったら、人肌が恋しくなったら、俺を呼べばいい。…阿含氏の代わ りになるのは悔しいが、ヒル魔氏が俺を見てくれるまで、いくらでも待つから。」
 自分は人の弱みに付け入る悪魔なのかもしれない、大和は思った。悪魔に付け入る悪魔だなんて、俺も随分凶悪になったも のだ、と。けれどもう、ただ見つめているだけなど出来ない。ホモだゲイだ悪魔だと、誰に蔑まれようが後ろ指差されようが 、それでヒル魔が笑うのならば。あわよくば、その笑顔が自分自身に向くのならば。これはただのエゴなのだと分かっている 。相手の幸せよりも、自分が相手を幸せにする、その充足感に酔いたいだけだ。それでも。これだけの想いを抱えて、黙って 見ているだけなど、大和には出来ない芸当だった。
 「…テメーは、気持ち悪くねーのかよ。テメーはホモじゃねーだろ。」
 「そうだね。でも、ストレートでもないんじゃないかな。男性を好きになったのは初めてだけど…ほら、ヒル魔氏を抱きし めただけで、こんなに興奮してる。」
 大和はキーボードに添えられたまま止まっていたヒル魔の手を取り、後ろ手に自分の雄を触らせる。既にそこは半ば程勃ち 上がっていた。ヒル魔が薄く開いた唇の間から小さく息を吸い込む。こういうのもセクハラって言うんだろうな、大和はまた 自嘲した。そして自分に当てたヒル魔の手を離させると、逸る気を抑えるように、自らもゆっくりと深呼吸をした。
 「こんなシチュエーションだし、本当はすぐにでも押し倒したいんだけど。」
 みっともないとは思いつつも、正直な気持ちを吐露する。強がったって見栄を張ったって、腕の中の悪魔は全てお見通しな のだろうから。
 「返事は今すぐじゃなくても」
 「いいぜ。」
 「え?」
 「いいぜ、っつったんだ。二度も言わせんな、糞癖毛。」
 大和は驚きに、きつくヒル魔を抱いていた腕を緩めた。顔がきちんと見えるように、デスクの横、ヒル魔の正面に回り込む 。ヒル魔はいつものように悪魔の笑みを浮かべていたが、揺れる瞳はキラキラと輝いていて、大和をはっとさせる。
 「賭けてもいい。先に嫌気が差すのはテメーの方だ。俺なんかと付き合っても何の面白みもねぇよ。」
 俺なんか、と自分を卑下する言葉は、聞いているだけで痛かった。何故そんなにも自分を軽視するのか。ヒル魔がここに 居るだけで、大和の心はこんなにも掻き乱され、満たされるというのに。
 「…いいだろう、乗ったよ。じゃあもし俺がいつまでたってもヒル魔氏に飽きなかったら、ヒル魔氏はなにをくれるんだい ?」
 「だから俺が勝つっつってんだろ。」
 「じゃあヒル魔氏が勝ったら?俺は何をすればいいんだ?」
 「それは……そうだな、俺が言うことを何でもひとつきけ。」
 「それだけでいいのかい?」
 そんなこと、別に賭けなどなくとも叶えてやれる。この悪魔の前に跪くことなど。寧ろそれを望んですらいるのだと、ヒル 魔とて気付いているだろうに。
 大和は、節だった大きな手を、ヒル魔の滑らかな頬に寄せた。
 「……キスをしても?」
 「ケケケ、そんなこといちいち訊くのか、テメーは?」
 らしい言葉にお互い笑みを零して、ゆっくりと目を閉じた。柔らかく触れ合った口唇は甘く切なく、少しだけ塩気がして、 徐々に深みを増していった。大和は身を乗り出し、ヒル魔の腰と頭を抱き寄せる。ヒル魔は大和の剥き出しの肩に手を回す。 まだ汗の渇かないそこが、ヒル魔の掌で更に温度を上げる。苦しい、口唇を離していても。吐く息も吸う息も熱く濃く、窒息 しそうな。
 「…ッは、はぁ……ねぇ、ヒル魔氏?このまま抱いても?」
 耳の中、熱い吐息と共にそう吹き込めば、ヒル魔はビク、と腰を揺らした。
 「っふ、ぁっ……………………………俺ん家行くぞ。」
 目元を染めながら小さく呟くヒル魔に、大和はいつものように爽やかな笑みを浮かべた。


******************************


 大学から程近いヒル魔の部屋は、大和の部屋と比べても然程大きくはないだろうが、物がないために広く見えた。入ってす ぐのダイニングには、一人暮らしにしては大きめの液晶テレビやオーディオデッキ、ガラステーブル、ブラックのカウチソフ ァ。モノトーンに統一されたインテリアも、その過ぎる程簡素な印象を強くしていた。外は雨が降り出したのだろう。僅かに 聞こえる雨音が、密度の高い静寂を落とす。
 「シャワー浴びるか?」
 たったそれだけの言葉にも、大和は色を感じ取った。すぐにでも、その内に身を埋めたくなる。
 「いや、俺はさっき部活終わってから浴びたから。」
 「じゃあ適当に待ってろ。」
 言い捨てるとヒル魔はスタスタとバスルームに向かった。
 「ヒル魔氏は浴びるの?俺はそのままで構わないよ。」
 ヒル魔は立ち止まり振り返ると、日に焼けて赤くなった白い腕で首筋を押さえた。
 「……準備が要るんだよ。女とは違うからな。」
 大和は、自分の発言がヒル魔に誤解を与えてしまったことを悟った。
 「いや、そうじゃないんだ。すまない。男同士のセックスがどういうものかも、どこを使うのかも、どういう準備が必要 なのかも大体わかっているつもりだ。ただ、その準備も俺がやりたいんだ。駄目かな?」
 堂々とした、けれど何処までも優しい大和の言葉に、ヒル魔は僅かに目を見開き、直後に耳を赤く染めた。ヒル魔は、流暢 な二ヶ国語を操る割に意思伝達を図る言葉は少ない。何を言われずとも相手の心の内を読むことができるし、自らのことは語 ろうとしない。思い出してみれば、いつもヒル魔とのコミュニケーションは、大和が噛み砕いて説明するまでもなくヒル魔が 状況や心情を察し最善の答を返していた。
 しかし今のヒル魔はどうだ。躊躇、自信の欠如、不安、焦燥、恐怖。負の感情のフィルターはヒル魔の眼を曇らせ、ヒル魔 を求める大和の熱は今のヒル魔には見えない。
 今のヒル魔には、言葉を尽くさないと伝わらないのだ、大和は思った。幸い、短くはないアメリカ生活で言語に頼るコミュ ニケーションには慣れている。ましてヒル魔のためならば、どれほど言葉を重ねても惜しくはない。
 「…テメーは男と経験ねえだろ。いいから今日はマグロんなってろ。」
 今度こそヒル魔は、バスルームへと消えた。


 生乾きの下りた金髪は、ヒル魔の険を隠していた。細く角度のある眉も、切れそうな程鋭利な輪郭も、今はしんなりと金髪 に覆われ印象を柔らかくしている。前髪が落とす影が、視線をも和らげ色を持たせていた。シャワーを浴びたヒル魔を上から 下まで眺め、大和は歓喜に溜息を溢した。そしてしっかりと着込まれた黒のTシャツとスウェットパンツに苦笑する。
 ゆっくりと近づいてくるヒル魔を待ち切れず、大和はソファから立ち上がりヒル魔を胸に抱き込んだ。大和の唇より僅かに 下にあるヒル魔の目尻を食み、そのまま薄い唇へと頬を辿った。マナー違反かな、と思いつつも大和は瞳を閉じなかった。目 を閉じたヒル魔の頬に落ちる睫毛の陰や、舌を吸い上げる度に寄る眉根、シャワーのためだけではなく色付いていく頬や耳ま で全てを焼き付けておきたかったからだ。右手はヒル魔の後頭部を、左手は背を撫で回し、徐々に力が入らなくなったヒル魔 は大和の首に腕を回して縋りついた。それを合図に大和が腰を押し付ければ、ヒル魔が堪え切れず唇を離した。荒い息に乗る 小さな声。薄く開いた口から覗く熟れた赤に誘われて、大和は再び唇に噛み付いた。大きく開かせ唾液を送り込む。この燃え 尽きそうな衝動が、少しでもヒル魔に伝わればいいと思いながら。舌を出し絡ませ合い、シャツの中に右手を忍ばせた。
 「…っぁ…!」
 捏ねるように掌で撫ぜれば、既に固く尖っていた乳首が引っかかる。背に置いていた左手もスウェットの中に忍ばせれば、 ヒル魔がジーンズ越しに大和の熱に触れてきた。
 「くっ…!」
 ヒル魔が欲している。その事実に神経が焼き切れる程興奮し、大和はヒル魔の腰を固定して自身の熱をヒル魔の熱にぐりぐ りと擦り付けた。ヒル魔の体がビクビクと震え、過ぎる刺激にどちらからともなく唇を離した。尖った耳朶を嘗め回し、カチ ャカチャと音を立てるピアスを口に含む。
 「ヒル魔氏…ヒル魔氏が欲しい。」
 耳の中にそう吹き込めば、大和、と濡れた声が返ってきた。
 「ベッドに行こう。思う存分ヒル魔氏を愛したい。」
 切れ長の瞳が見開かれ、深い闇色の瞳が更に色を濃くした。
 「……糞クセェこと言ってんな。」
 そう言って腕の中から抜け出すヒル魔に大和は焦る。しかし背を向けたヒル魔が向かった先には、寝室へ続く扉があった。


 マグロになっていろ。その言葉通り、ヒル魔は一方的に愛撫されることを拒んだ。糞ノンケの癖に、という罵詈はしかし、 拒絶されるのではないかという恐怖の裏返しだと大和は思う。そんなヒル魔の恐怖の裏に阿含の姿を感じて、大和は砂を噛 んだ。あれは大和が入学して間も無くの頃だったろうか、阿含が新入生の男子学生に告白されている現場に、大和と鷹、そ してヒル魔と一休が偶然通りかかってしまったことがあった。気持ち悪ぃ、吐き捨てた阿含の声が嫌に響いた。斜め前を歩 いていたヒル魔の体が硬直し、表情を失うのを、大和はじっと見つめていた。思えばあれが決定打であったかもしれない。 大和はヒル魔がそういった人種であることを確信し、同時に自身のヒル魔への恋慕を自覚した。三年前のクリスマスボウル、 続くワールドカップ。あの時から、とうに囚われていた。
 だから大和はヒル魔の愛撫を拒まなかった。ヒル魔が毎日眠る黒いベッドに大きな身体を横たえ、ヒル魔からの口づけを 受ける。余分な服は脱ぎ捨て、お互い下着一枚で。くちゅくちゅと巧みに舌を動かしながら、ヒル魔は繊細な指で大和の雄 を扱く。一度離れた唇は、頬を舐め、首筋を辿り、大和の鍛え抜かれ盛り上がった胸板を吸い上げた。
 「く、っ…ぅ。」
 跳ねる大和の身体に、ヒル魔が美しく微笑んだ。濡れた唇に光を反射させて。本当は俺がヒル魔氏を溶かしたいんだけどな 、思いながら大和は、今は柔らかなヒル魔の髪に指を差し入れた。節くれだった大きな手でヒル魔の頭を撫でる。普段は悪魔 の皮を被った美しい男が懸命に自分を愛撫する姿に、大和は背筋にゾクゾクとした痺れを感じた。手を居心地の良い金髪から 剥がし、ヒル魔の雄へと伸ばした。しかしそれは届く前にヒル魔の手に押さえ込まれる。
 「余計なことすんじゃねぇ。」
 「余計なことじゃないだろう。俺がやりたいんだ。ヒル魔氏を気持ち良くしたい。」
 半身を起こし体勢を入れ替えようとする大和を、ヒル魔は上から体重を掛け再びベッドに沈めた。
 「いーからテメーはくたばってろ。」
 尚も抗議の言葉を口にしようと上半身を起こした大和は、眼前に広がる光景に己の目を疑った。ピチャ、薄い布越しにヒル 魔の舌が大和を捕らえる。既に痛い程張り詰めたそこは、きつめのボクサーパンツからはみ出し亀頭を覗かせていた。ヒル魔 はその布の上から唇と舌だけで固く勃起したそこを何度も往復させた。片手を陰嚢に沿え、片手は大和の太腿に回して。頭を 下げているために自然浮き上がるヒル魔の腰が、口淫の動きに合わせ僅かに揺れて、大和は軽い眩暈を覚えた。
 「……すげ……。」
 余りの太さと大きさにヒル魔が感嘆の声を漏らす。その熱い吐息が掛かり、大和が屹立をまた一回り大きくした。
 「糞、まだデカくなんのかよ…!」
 それは誘い文句にしか聞こえなかった。ヒル魔は不機嫌そうに大和の下着をずり下げ、勢いよく飛び出した大和の雄を見、 舌舐め擦りをした。大和も協力し、両の足から下着を外す。上半身を起こしたまま、ヒル魔の熱い口内に血管が浮き出る程怒 張した赤黒い自身が飲み込まれていくのを、大和は恍惚と眺めた。手は根元に沿え、時折膨れ上がった陰嚢を揉み解しながら、 ヒル魔はゆっくりと大和の怒張を呑み込んだ。やがて先端がヒル魔の喉奥に当たる感触がし、大和は大きく息を吐いた。頬が 窄められ、ちゅぶ、と音を立てヒル魔が吸い上げる。
 「は、くっ………イイ…気持ちいいよ、ヒル魔氏……。」
 奉仕している、ヒル魔が、自分に。その事実に愛しさが込み上げ、大和は何度も何度もヒル魔の髪を撫で、言葉を捧げた。
 手で扱き、ベロベロと棹全体を舐め、亀頭の割れ目に尖らせた舌を差し込む。苦しげに顰められる眉や赤みを帯びた目元、 鼻に抜ける掠れた声。ちゅぶちゅぶと大きく音を立て、時折上目遣いにこちらを見上げ、ニヤリと笑う。こんな卑猥なことを 、ヒル魔に教え込んだ男がいるのかと思うと鳩尾にどす黒い痛みを感じるが、今この瞬間のヒル魔を感じる方が大和には大事 だった。美味しそうに、と言うのだろうか、ヒル魔は窄めた唇で大和をパックリと咥え、そのまま前後にピストンし始めた。
 「ぅ…ん、んっ…ふ、く…。」
 苦しそうにくぐもった声を上げながら徐々にスピードを上げていく健気な姿に、我慢がきかなくなりそうで、大和は無理矢 理ヒル魔の頭を引き離した。離れたヒル魔の唇と大和の間に、透明な糸が垂れた。ヒル魔の、いつもは色の薄い形の良い唇が 、赤く腫れ上がっていた。不思議そうな瞳でこちらを見つめるヒル魔に、込み上げる凶暴な衝動を隠して大和は言った。
 「ヒル魔氏の中でイきたい。」
 それを聞いたヒル魔が後ろを向いて自身のボクサーパンツに手を掛けるのを、大和は舐めるように見つめた。


 大和に愛撫を加えながら自分で後を解し始めたヒル魔に、流石に頭にきて大和は体勢を入れ替えた。
 「糞!だからテメーは寝てろっつって」
 「俺もずっと言っているだろう、ヒル魔氏を愛したいんだ、って。」
 ヒル魔を仰向けにベッドに縫いつけ、腰の下に枕を入れる。先程ヒル魔が放ったローションのボトルを取り、片手でキャッ プを外して大量に掌に垂らした。温めるように数度捏ね、誘うようにヒクつくピンク色の孔に塗り込む。
 「っは!…ぁく……ぁっ!」
 ヒル魔の雄を扱きながら、指を一本挿入した。中の粘膜が蠢き、大和の指に吸い付く。どうしても力が入ってしまうのか、 日に当たらず真っ白な腿と尻の筋肉が時折引き攣ったように筋を浮かせた。中の指をくいと曲げる。その刺激すら耐えられな いといった風に、ヒル魔が足を閉じようとバタつかせた。
 「ヒル魔氏、自分で足を広げていられるかい?」
 瞬間、さっとヒル魔の頬に赤みが差した。
 「この糞癖毛!テメー何言ってやがる!」
 「嫌ならうつ伏せになってもらうけど?」
 恥らうヒル魔がとても可愛らしく、大和はヒル魔の足の付け根にちゅ、とキスを落とした。ヒル魔は、糞詐欺師が、死ね、 と舌打ちをし、観念したように自身の膝裏を手で抱えた。大和に向かって大きく開脚する自分の姿に堪えたのか、ヒル魔は 顔を背けた。
 「…綺麗だよ、ヒル魔氏。」
 そう言うと、大和は伸び上がってヒル魔の項を強く吸い上げた。そこに小さくは無い内出血の痕が残ったのを確認して、 再び中の指を動かした。
 互いの荒い息遣いが雨音に溶け込む。内側から熱を上げる身体に、空調は何の役にも立たなかった。ヒル魔の身体にも汗 が滲んで、ローションと混ざり合って蛍光灯の光を跳ね返すそれは大和の視覚を刺激した。掌をヒル魔の脇腹や胸に滑らせ れば、吸い付くように馴染んだ。
 阿含程ではないにしろ、大和は自分がヒル魔に好かれている事を知っていた。それはヒル魔がかつて、泥門のメンバーに 注いでいたのと同種の、将来が有望な弟を愛おしく見守る兄のような視線であったとしても、少なくともフットボウルプレ イヤーとしては大和はヒル魔の中で阿含と同じ、最高位に位置していることは間違いなかった。そう、少なくとも、部活中 、試合中だけは、大和を阿含と同じ位置で見ているのだ。
 誘うように小さく立ち上がった乳首に吸い付く。片手でヒル魔の後ろを解し、もう片方の手でヒル魔の性器や空いた乳首 を弄る。小さく漏れるヒル魔の喘ぎに聴覚を犯され、膨らむ欲望に徐々に理性が焼き切れていくのを大和は感じた。中に入 れる指の数を増やし、感じさせることよりも孔を広げることに集中する。腹につく程反り返ったヒル魔の性器に時折唇を落 としては、「好きだよ、ヒル魔氏。好きだ…」と何度も囁いた。


 「ぁあ、ア…は…っ」
 「っ……全部入ったよ。」
 きつすぎる締め付けに、入れた早々もって行かれそうになるのを何とか堪え、強張ったヒル魔の力を少しでも抜かせようと 、大和はヒル魔の腰や足を摩った。ヒル魔も努めて深呼吸を繰り返し、どうにか動ける程に綻んできた。あんなに小さく閉ざ されていた蕾が、その口をキチキチと目一杯に拡げ大和を飲み込んでいる。気の遠くなるような痛みを感じているだろう。け れど、屹立を扱きながらゆっくりと時間を掛け挿入したためか、ヒル魔の雄は未だ勃起したまま、その鈴口からトロリとした 透明な液を滲ませていた。ローションに塗れた指で、結合部をツ、となぞる。それにヒル魔の後孔がまたきゅん、と締まって 、大和は汗を拭きながら微笑んだ。
 「動くよ。痛かったら言ってくれ。」
 痛かったら、だなんて気休めでしかないが、出来る限り優しくしたかった。大和はヒル魔の両足を肩に担ぎ、ヒル魔の両手 を自分の肩に回させると、ゆっくりと律動を開始した。
 「っは…く……っぃ…ぁ…」
 じりじりと引き抜いては、ゆっくりとヒル魔の前立腺を擦りながら押し進める。全て埋まったら小刻みに、目蓋に頬に触れ るだけのキスを幾つも落として。押し捏ねるように腰を回しながら、胸を揉み、性器を扱いた。大和はローションの蓋を開け 、ヒル魔の反り返った雄に垂らした。
 「…ぁ!」
 ヒクリ、目に見えて屹立が揺れ、同時に後ろがうねった。入り口、腹側の浅い箇所。ヒル魔の反応を一つも漏らさぬように 、大和は見つめ続けた。押し込むときは優しくゆっくり。引き抜くときは激しく速く、同時に手淫も施した。ヒル魔の表情が 、蕩け赤みを増していく。肩と首に回されたヒル魔の手が、時折縋るように爪を立てるのは、そこが感じる場所だからだ。
 ヒル魔は徐々に花を開き、大和の形に慣れていった。痛みを覚える程きつかった蕾は、今はもう吸い付くように大和を包ん でいる。大和は腰を穿つリズムを速めた。パンパンと肉がぶつかる音と、たっぷりと塗り込まれたローションが立てるヌチャ ヌチャという粘着質な音が、雨の音を掻き消した。いつもはマシンガンのように回るヒル魔の口が、静かに色付いた吐息しか 零さないことに、どうしようもなく身体が熱くなる。
 大和は身体を起こし、ヒル魔の両腕を両手で掴んだ。掴んだヒル魔の両腕を、ぐいと自分に引き付けたまま、熱を射ち込んだ。
 「ヒッ…ぃ……ぁ、あ」
 結合が深くなり、肩に担ぐヒル魔の脛が時折ピンと張った。
 「気持ちいい?」
 「あ、あっ……っくな、糞……ぁ、でけっ」
 「俺はすごくイイよ。ヒル魔氏の中、すごく気持ちいい。」
 「っくぁ……っ、死ね!」
 そう毒づく自分の顔が、これ以上無い程艶めいていると、ヒル魔は気付いているのだろうか。リズムを変え、角度を変え、 強弱をつけて、大和は何度もヒル魔を開いた。足りない、もっと奥深くまで知りたいのだと。
 「…ヒル魔氏、すまない。」
 ぁ?と濡れた疑問の声を上げるヒル魔を、大和は抱き上げた。そのままベッドの上に胡坐をかき、向かい合って座る姿勢に なる。驚きと衝撃に悲鳴を漏らすヒル魔の腰を、広げた足ごと抱え込み、持ち上げた。ズル、と半ば程楔が抜ける。バランス を取ろうと大和の首に必死にしがみつくヒル魔を待たず、そのまま腕の力を抜いた。重力に従い、ヒル魔の身体が大和の楔に 串刺しになる。
 「ァアアッ―――!」
 泣き声にも似たヒル魔の嬌声は、ただ大和の雄を煽るだけだった。ヒル魔を支える大和の腕に、鍛えられた筋肉が浮かび 上がる。深く、もっと深く。その衝動のまま、大和はヒル魔の身体を上下させ、自身の腰を突き上げた。目の前にあるヒル魔 の首筋を、鎖骨を、肩を、耳を、手当たり次第に舐め回し、歯を立てた。先程まであんなにも声を出さないでいたヒル魔が、 壊れたように甘い悲鳴を上げている。大和、ヤマト、やまと…。それは甘美な毒薬のように大和の身体を蝕み、永久に尽きな い渇きを植え付けていく。
 「…ごめん、ヒル魔氏。」
 再度の謝罪に、しかしヒル魔は疑問の声すら上げる事が出来なかったようだ。こんなことをしたら、ヒル魔氏は壊れてしま うかもしれないな、大和は思ったが、自分を受け止めて壊れたヒル魔の美しさを想像し、余計に歯止めが利かなくなっただけ だった。そしてヒル魔を抱きかかえたまま、胡坐をかいた足に力を入れ、立ち上がった。
 ヒル魔が掠れた声で高く絶叫する。ベッドマットの上、足場は若干悪いが、立ったままの挿入は想像以上に深く心地良かっ た。ヒル魔が全体重を掛けて大和の熱を飲み込むことになる。落ちそうになったヒル魔は大和の腰に長い足を絡めた。あまり の悦楽に大和も喉の奥から声を絞り出す。何度も名前を呼び、好きだと繰り返しながら、突き上げる速度を上げていく。一日 部活をやった後にこれじゃあ、明日は筋肉痛で動けないかもしれないな、等と思いながら、ヒル魔の体が溶けてなくなってし まいそうな程、大和はヒル魔を貪った。
 「イク……!ごめん……中に出すよ。」
 そう囁き壊れそうな程ヒル魔を抱き締め、己の楔に強く下ろした。腰を捻じ込み、これ以上ない程奥まで突き込み、精液を 叩き付けた。

 呼吸を落ち着かせ、ヒル魔の身体を抱え直すと、腹に濡れた感触がした。ヒル魔が、大和で達していた。激しすぎた性交の ためか、くったりと力なく、瞳は閉じたまま。大和は精悍な顔に深い笑みを浮かべて、気を失ったままのヒル魔に恭しく口 づけた。
 「…好きだよ、ヒル魔氏。」










こんなにガッツリ大和ヒルになるとは思わなくて自分でも吃驚しています。
エロシーンは長いですが雰囲気を重視したらエロくなりませんでした。凹
大和なら出来ると思うんだよね、ヒル魔を駅弁。
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